
「和国の教主」から「世界の摂政」へ!?
聖徳太子(574~622)は多くの人々から慕われただけではなく、最澄や空海、法然、親鸞、日蓮、一遍など多くの仏教指導者に受け継がれて、日本の仏教は発展してきた。
親鸞は聖徳太子のことを「和国の教主」、つまり日本仏教の釈迦のような存在であると讃えた。
聖徳太子が『十七条憲法』をつくる以前には、豪族間の権力闘争や蘇我馬子が崇峻天皇を殺すという事件があり、政治状況は不安定であった。日本を平和な統一国家にすることが急務だったために、『十七条憲法』がつくられたのである。
[作品2-3]和の精神(Wa Spirits) 21 の解説でも書いたが、2015年、中東でIS(イスラム国)が戦闘地域を拡大させていたときに、どうしたら戦争やテロ、難民問題を解決できるのかを考えながら、和を貴んだ聖徳太子の『十七条憲法』を読み直してみた。
国籍を問わずに現代人に『十七条憲法』を理解してもらいやすくする試みの一つが「和の精神(Wa Spirits)21」である。
最近は、アフガニスタンのタリバンによる征服、IS(イスラム国)によるテロの再発、ミャンマーの軍事政権、香港の一国二制度を一国一制度へ変更した中国、北朝鮮のミサイルや核弾頭の開発、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻など、武力や軍事力を背景にした独裁的な国が多くなっている。
民族、国、宗教の違いを超えて、『十七条憲法』や「和の精神(Wa Spirits)21」を実行できれば、各国の紛争は解決して、戦争やテロ、難民、人種差別などを生じさせないような真に平和な社会、国、世界をつくることができる。
聖徳太子が亡くなって1400年がすぎたが、以前から中村元や梅原猛などが指摘していたように、聖徳太子は日本の国内以上に世界史的な意義がますますでてきている。
つまり「和国の教主」から「世界の教主」あるいは「世界の摂政」のモデルになっていただく価値、必要性があると思う。
最初は本作品の見出しを「和国の教主」から「世界の教主」へ!! と思ったが、他国の宗教を変えて教主になることより、いかなる宗教、宗派の国であっても、聖徳太子が政治のパートナー、補佐役として、つまり「摂政」のモデルとして、まず難民や飢餓者をださない国になってもらうことが大切なのである。
そのためには、「和」をつくりだす政治的、社会的な役割を果たす人物・摂政が必要である。
ワイロが多く不平等で政治が不安定な国では、私心がなく精神性が高い国民のためになる政治をして、国、社会を豊かにして平和にすることができるリーダー・摂政が必要なのである。
聖徳太子は『十七条憲法』の前年に冠位十二階の制度を制定して、仕事の役割分担のシステムを導入して国の行政を整え、公正な裁きもして国民のための政治をした。
聖徳太子をモデルとして、たえず国民や役人と対話をしながら政治をしていくことが大切なのである。
まず『十七条憲法』を現代の各国の現状に合うように一部を変更して進化させる試みをして、各国版『十七条憲法』あるいは「和の精神(Wa Spirits)○」などをつくる作業をしてもらうのがいいであろう。
注:
中村元(1912~1999)は東京大学名誉教授、東方学院の創立者。生誕の地、松江に中村元記念館が2012年に開設された。インド哲学、仏教学、比較思想学が専門であった。 『中村元選集 決定版』は全40巻(32巻+別巻8巻) で春秋社刊。 別巻6に『聖徳太子 日本の思想Ⅱ』がある。
梅原猛(1925~2019)は京都市立芸術大学名誉教授、国際日本文化研究センターの初代所長であった。 『隠された十字架——法隆寺論』(新潮社、1972年、のちに文庫化、1981年)は法隆寺の建立について独創的で大胆な説を提示し大きな話題となった。 『聖徳太子』(小学館2巻、1980~1985年、のちに集英社文庫4巻、1993年)はお薦めである。 『梅原猛著作集』全20巻(集英社、1981~1982年、小学館、2000~2003年)などがある。
2022.9.1
次の3作品が、スマートホンなどのサイト「まんが王国」で3月25日からみられます。
『深層心理学のレジェンド ユング』石田おさむ
『精神分析のレジェンド フロイト』石田おさむ・画, 細山敏之・作, 福島章・監修
『近代科学のレジェンド ニュートン』石田おさむ・画, 千崎研司・作,渡辺正雄・監修
各作品名をクリックすると、各画面がみられます。