
進化するコロナウイルス
有史以来、疫病つまり感染症は何度も人類をおびやかしてきた。たとえばマラリアや天然痘は3000年以上前の古代エジプトでも流行し、亡くなった王もいる。
古代から人類が文化交流や戦争をすると、感染症がはやっていた。
『日本書紀』によると、日本に仏教が伝わってきたときに崇仏派と排仏派の対立が生じるが、疫病がはやり、排仏派が反対の理由にしている。
また奈良時代には遣唐使により中国から天然痘が伝わってきて流行する(735~737年)。藤原四兄弟が次々に亡くなるなど政治体制に大きな影響を与えた。
聖武天皇が奈良の東大寺に大仏造営をするきっかけは天然痘に対する精神復興対策だったという。労働人口が減ってしまったために743年の墾田永年私財法は経済対策として実施された。
今回の新型コロナウイルスの世界的大流行は、ほとんどの人にとっては想定外のことであったろう。しかし、海外の一部の感染症の専門家や学者などでは予想していた人もいたようだ。
2002~2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)や2012年のMERS(中東呼吸器症候群)はいずれもコロナウイルスが原因であったが、日本では流行しなかった。
それ以前の1989年~1993年にかけて厚生省指導により開発されたおたふくかぜ用などの3種混合ワクチン(MMRワクチン)で副作用の訴訟問題が生じてから、ワクチン行政は後退していった。そのため、今回の新型コロナウイルスに対して厚生労働省や政府の対策は後手にまわった。
今後も、より変異し進化した新しいウイルスや感染症が発生する可能性がある。ワクチンや治療薬の開発を他国に頼っていては適確な対応ができない。研究者や企業だけにお任せしているのではなく、政治家が研究開発の支援体制や実用化に向けての政策をたてなおしてリードする必要がある。
今回、与野党の政治家に限らず各都道府県の知事や医師、マスコミなどで日本独自のワクチンや治療薬を開発する大切さを強調して行動する人がほとんどいなかったのは残念であった。
2021年4月に菅義偉首相はアメリカのバイデン大統領と会談するために渡米したとき、ファイザー社のトップに直接電話してワクチンの輸入を早める交渉をした。
多少の遅れはあったものの1日100万人のワクチン注射の目標を掲げて、2021年9月末にワクチンを1回接種した人はほぼ約70%、2回接種した人はほぼ約60%になり、第5波が収束して「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」が全面解除された。
菅首相の支持率は低下し再選されることはなかったが、貢献度は大であった。
ワクチンや治療薬の国産化については、2021年5月13日になり、ようやく産官学の代表でつくる政府の医薬品開発協議会が次のパンデミックに備えて国産ワクチンの開発体制を再構築する提言をした。
同8月21日に政府は国産ワクチンの開発強化のため拠点となる大学を公募して、今後10年間研究費を支援し、来年度の予算は65億円だという。
いずれも、まことに遅いなーというのが実感であった。
しかし、治療薬として抗体ワクチンの実用化、飲み薬などの開発が進み、今後、鼻に噴霧するワクチンや低温ではなく常温で保存でき、3回でなく1回でもいいワクチンなど、より一層便利なワクチンや薬の開発ができれば、都市封鎖などをする必要性がなくなる。
今回、アメリカが1年もかからずにmRNAのワクチンを実用化したことは驚異的であった。日本では安倍首相が2020年4月に総額で466億円をかけてマスクを配布したが、このお金はワクチンや治療薬の開発に使うべきであったであろう。
この判断の違いが、アメリカと日本にはあった。
2021年10月になり安倍首相が配ろうとしたマスク約8200万枚(115億円分)が倉庫に保管されていて6億円かかっていることがわかった。その後、このマスクは岸田首相により希望者に配布されることになった。
税金のムダ使いはやめて、1円でも多くワクチンや治療薬の開発に当てるべきであろう。
イギリスのジョンソン首相は2021年6月のG7の共同宣言で今後またコロナウイルスが流行する場合は、100日で新しいワクチンを開発すること目標とすることを発表した。
mRNAを治療に役立てる研究をアメリカのペンシルバニア大学などでしてきたハンガリー出身のカタリン・カリコ博士(ドイツ、ビオンテック副社長)は4~6週間で変異ウイルスに対する新しいワクチンをつくれるという。
2021年11月にデルタ型にかわり感染力の強いオミクロン型がはやるのではと報道されて、2022年1月に急速にはやり、2月には第5波をしのぐ第6波のピークとなった。
欧米に比べて第3回目のワクチンの接種が進まず、高齢者が感染することが多くなった。3月になってワクチン注射が進み、感染者の人数が減り始めてはいるもののゆっくりしている。
さらに感染力の強いオミクロン型の派生型BA.2がはやりつつあるという。
第7波にそなえて4回目のワクチン注射の接種計画が必要なようで、新型コロナウイルスを季節性インフルエンザに近づけていく必要がある。
いずれにしても変異し進化するコロナウイルスに対応するためには、自国で新しいワクチンや便利な治療薬などをもっと開発して「医学先進国」に進化するとともに、人類の精神と心も進化させて、国際協力ができるようにする必要がある。
そのためには「和の精神(Wa Spirits)」を世界に広めて、各国、各民族が協力しあい、貢献しあって生きていけるようになることが大切になる。
つまり、単なる変異ではなく進化するコロナウイルスに対応して生きるためには、人類は心身とともに医学をもっと進化させる必要があるのである。
2022.04.01
『深層心理学のレジェンド ユング』石田おさむ
『精神分析のレジェンド フロイト』石田おさむ・画, 細山敏之・作, 福島章・監修
『近代科学のレジェンド ニュートン』石田おさむ・画, 千崎研司・作,渡辺正雄・監修
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