ユングと立体マンダラ
C.G.ユング(1875~1961)は1922年に母親が亡くなった後、1923年からスイスのボーリンゲンの湖のほとりに石で塔状の家(右上)をつくり始めた。その後、増築をしていった。
右下の絵は1927年、左下は1931年、左上は1956年に完成した建物である。
ユングにとって、最初の塔は母の像、母の胎内を意味していた。ユングは塔の中で休息すると再生の感情が得られて、本来の自分自身、自己に成長することができた。
1955年に妻エンマが亡くなり、ユングは二番目の塔をつくった後、母性的で霊的な二つの塔の間にある低い中央部分が自分だと気づき、中央部分に二階を増築して自己を表現していった。
塔の建物は精神的な世界をも表し、すべての部分が調和した立体マンダラであるといえる。人類に普遍的な無意識を表現したものといえる。
ユングは塔の建物だけではなく、まわりの自然とも調和を感じて、創造と遊びが一体となる生活をすることができた。
なお、空海は中国から日本へ両界曼荼羅を持ち込んだだけではなく、京都の東寺(教王護国寺)の講堂に大日如来を中心にした21体の仏像による立体マンダラをつくっている。また、高野山の根本大塔の中だけではなく、高野山全体や東寺全体も大きな立体マンダラとなっているといえる。
参考の主な本:
『ユング自伝』1,2 ヤッフェ編、河合隼雄・藤縄昭・出井淑子訳、みすず書房、1972年、1973年
『無意識の構造』河合隼雄、中央公論社、中公新書、1977年
『黄金の華の秘密』C.G.ユング、R.ヴィルヘルム著、湯浅泰雄・定方昭夫訳、人文書院、1980年
『心理学と宗教』C.G.ユング著、村本詔司訳、人文書院、1989年
『個性化とマンダラ』C.G.ユング著、林道義訳、みすず書房、1991年
『評伝ユング』Ⅰ・Ⅱ、バーバラ・ハナ―著、後藤佳珠・鳥山平三訳、人文書院、1987年
『ユング伝』ゲルハルト・ヴェーア著、村本詔司訳、創元社、1994年
『赤の書』C.G.ユング、ソヌ・シャムダサーニ編、河合俊雄監訳、田中康裕,高月玲子、猪股剛訳、創元社、2010年
『赤の書』テキスト版、C.G.ユング、ソヌ・シャムダサーニ編、河合俊雄監訳、田中康裕他訳、創元社、2014年。
『赤の書』図版版、C.G.ユング著、創元社、2018年
『ユング「赤の書」の心理学 死者の嘆き声を聴く』ジェイムズ・ヒルマン、ソヌ・シャムダサーニ著、河合俊雄監訳、名取琢自訳、創元社、2015年
『空海 塔のコスモロジー』武澤秀一著、春秋社、2009年
『マンダラの謎を解く 三次元からのアプローチ』武澤秀一著、講談社現代新書、2009年
『マンガ ユング 深層心理学入門』石田おさむ、講談社+α文庫、1997年 同書は現在、『深層心理学のレジェンド ユング』と改題されて、「まんが王国」から配信されてスマートホンでみられます。
マンガ フロイトの「心の神秘」入門』石田おさむ絵、福島章監修(講談社) 1999年 同書は現在、『精神分析のレジェンド フロイト』と改題されて、「まんが王国」から配信されてスマートホンでみられます。
同じマンガ家の作品『近代科学のレジェンド ニュートン』も見られます。
各作品名をクリックすると、各画面がみられます。
2022.04.01
講談社で電子書籍化されました。
『マンガ ユング深層心理学入門』石田おさむ
『マンガ フロイトの「心の神秘」入門』 石田おさむ=画、細山敏之=作、福島章=監修
『マンガ ダーウィン進化論入門』 瀬口のりお=画、田中裕=作、渡辺正雄=監修
以上は、10月14日から配信。
『マンガ ニュートン万有引力入門』 石田おさむ=画、千崎研司=作、渡辺正雄=監修 10月21日から配信。
『マンガ 誰にもわかる人間アインシュタインと相対性理論』 山崎キクオ―=画、千崎研司=作、渡辺正雄=監修 11月4日から配信。